虫歯はどのように進行していくのか??(その③)
2023年6月2日
前回のコラム②では、歯の面に汚れが残ったままだとその汚れ自体が壁となり、唾液が歯の面に接触しないために再石灰化現象が生じないで、むしろ虫歯が静かに進行していき、冷水や温水がしみたり、何もしなくても痛みがでるという自発痛などが出る虫歯の黄色信号を経て、しみる・痛い、のが強烈になるという、いわゆる虫歯の赤信号に至るという事を解説しました。
さて、虫歯を治さないで放置していてよくある大変な問題はここからです。
痛み止めでその場をしのぎ続けていくと、あれだけ歯が強烈にしみていてズキズキとした痛みもあったのに、ある日突然ピタリと止まります。
痛みがピタリと止まったのは、歯の神経が死んでしまった結果で、死んだ歯の神経は元のように生き返ることはありません。
歯の内部は「ちくわ」のような筒状の空洞があり、その空洞に神経や血管が顎の骨から本1本の歯に入りこんできています。
神経や血管が入っているこの筒状の空洞を「歯髄腔(しずいくう)」と言います。
痛みが止まってホッとしてしまいますが、実はこの歯の歯髄腔の末端(分かりやすく言い換えると歯の根の先端)部では、虫歯で歯が壊れたというだけでは済まないことが起こり始めています。
細菌が増殖しながら歯髄腔を通過していき、増殖細菌が歯の根からはみ出て歯の根の先端の骨が溶け始めます。
骨が溶かされてアリの巣のような丸い形になっている状態を想像してみてください。
そして溶けた骨の中に徐々に膿がたまっていきます。
どんどん膿はたまっていくのですが、たまっていく膿が逃げていく場所がないので風船のように膨れるか、アリの巣のような形の骨の中に無理やりたまるしかありません。
無理やり骨の中でたまっている場合は激痛が続きます。
この激痛は痛み止めを飲んでも止まりにくいか、痛み止めを飲んで効いたとしても不十分で長い時間の痛み止めの効果が期待できないことがほとんどです。
骨がさらに溶かされ、たまたま細い管のような通路が骨の間に出来て歯ぐきの下にたまった膿が流れ出すと、突然痛みを伴って歯ぐきが腫れ出します。
骨の中で無理やりたまっている場合よりも、歯ぐきが腫れている場合の方が激痛は緩和されると言われていますが、歯ぐきの腫れは著しくなる場合もあり、顔貌が大きく変わってしまう事もあります。
血液の流れにのって全身にこの膿が回り始めると、菌血症から敗血症の過程をたどり、重篤な場合は死に至る場合もあります。
虫歯1つが重症になるだけで死ぬことがあるなんて考えたこともなかったかと思いますが、私の知っている人が、虫歯が原因で本当に死んでしまいました。
死因は(虫歯に起因する)敗血症による多臓器不全ということでした。