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部分的なかぶせものと全体のかぶせもの、どちらがいいですか?

2025年10月20日

前回のコラムでは、インプラントと「かぶせもの(クラウン)」の違いは何か、について詳しく解説しました。

前回の要点は、違いは何かを簡単に言えば、インプラントは歯そのものを失った場所に人工の歯根(ネジ)を埋め込んで歯を作る治療であり、かぶせもの(クラウン)は残っている自分の歯(または土台)に被せて形態と機能を元のように回復する治療であるということであり、どちらも咬めるようになり見た目を整えるための方法であるが、適応や手順、メリット・デメリット、そして費用感やメンテナンスが大きく異なってくるという内容した。

今回のコラムでは、部分的なかぶせものと全体のかぶせもの、どちらがいいのか、について詳しく解説していきます。

部分的なかぶせものと全体のかぶせもの、どちらがいいのかについて結論から言うと「どちらが良いか」はその歯の状態や咬む力、見た目の希望、将来のリスクを総合して決めます。一般原則は『できるだけ自分の歯を残す(=部分的)』ですが、歯が大きく壊れている場合や強い負担がかかる場合は『全体のかぶせもの(フルクラウン)』が安定することが多いです。

まずは違いを簡単に理解しましょう

●部分的なかぶせもの

・インレー(詰め物)、オンレー/アンレー(部分被覆)などを用いて、歯の一部だけを補う修復です。
・健康な歯質をできるだけ残す「低侵襲(削る量が少ない)」な方法。

●全体のかぶせもの(フルクラウン)

・歯の周囲全体を覆うタイプのもので、歯の形を大きく補い、強度を出すことが目的です。
・大きな欠損・破折・根管治療後の歯など、歯が弱くなっている場合に使います。

比較:長所と短所

・保存性(歯を残す観点から)
部分的 > 全体的
部分的な場合は必要最小限の切削量で済むため、歯の寿命につながることが多いです

・強度・耐久性
全体的 > 部分的(ただし素材・設計次第によりそうでもないこともあります)
歯の大部分が欠損していると、部分修復は割れやすくなるためフルクラウンが有利であることが多いです。

・審美(見た目)
どちらも素材でかなり差が出る(セラミック系は高審美だが、金属系は審美さが劣ります)。非金属であれば部分修復でも自然にできる場合があります。

・再治療のしやすさ
部分的は再修理や追加治療が比較的しやすいことが多いです。

・治療時間・費用
部分的は一般的に回数・費用が少ない傾向ですが、素材(自費のセラミック等)で費用は変わります。

適応の目安:どちらを選ぶかの判断ポイント

・残っている歯の量
→ 健全な歯質が多く残っていれば部分修復を第一に検討。歯冠の50%以上が失われている場合はフルクラウンが安全なことが多い、という目安があります(個人差があります)。

・咬合(咬み合わせ)の力
→ 歯ぎしりや食いしばりが強い方は、部分修復では破折リスクが高まるためフルクラウンや強度の高い素材を検討した方がいいです。

・歯の破折・亀裂の程度
→ 大きなクラックや欠けがある場合は全周で補強するフルクラウンが必要なことが多いです。

・根管治療(神経の治療)の有無
→ 根管治療をした歯は脆くなるため、フルクラウンで補強することが多いです。

・審美的要求
→ 前歯など「見た目重視」の部位は、部分修復でも十分に対応できる場合がありますが、色合わせ・透明感を重視するならセラミックの選択を検討します。

・歯周(歯ぐき)の状態
→ マージン(かぶせものの境目)が歯肉の深い場合は、清掃性を考えフルクラウンが有利なこともあります。

素材の違いが選択に与える影響

・ゴールド(金合金)
適合性・耐久性に優れ、部分修復でも長持ちしますが見た目は金属色です。奥歯に向いています。

・セラミック(e.max等)
審美性が高く部分修復でも美しく仕上がるが、薄すぎると割れるリスクがあります。

・ジルコニア
強度が高いので奥歯のクラウンに適します。表面処理で対合歯への影響を軽減します。

・ハイブリッド/レジン系
費用は抑えられるが、着色や摩耗が起きやすいです。

→ 部分修復でも材質選びで強度や寿命が大きく変わります。歯の状態とライフスタイルに合った素材をご提案します。

治療の流れとメンテナンス(共通ポイント)

・どちらもまず診査(レントゲン、咬合チェック)→ 必要なら根管治療や土台作り → 型取り(またはデジタルスキャン)→ 技工所で製作 → 試適・装着という流れ。

・装着後は咬み合わせ調整、定期検診、プロのクリーニングが重要。特に部分修復は辺縁部の清掃不良で二次むし歯になりやすいので注意。

症例で見る選択例

・小〜中程度の虫歯
インレー(部分詰め物)で十分なことがほとんどです。メリットは削る量少なく、見た目良好にすることも可能です(陶材などの白い素材の場合)。

・片側の咬頭(かみ合わせの突起)が欠けた場合
オンレー(部分被覆)で強度を補いながら歯を温存します。

・歯冠の大部分が欠損、または根管治療後
フルクラウンで歯全体を補強・保護をすることが多いです。

・前歯の審美改善で薄い表面修復が良い場合
ラミネートベニア(部分的)で対応可能なこともあります。

当院の方針について

・まずは歯を残すこと(低侵襲)を重視しつつ、長期的に壊れにくく再治療が少ない方法を優先します。

・「部分的にできるならそれで」「長持ちさせたいからフルクラウンで」など患者さんの価値観は様々なので、費用・時間・将来のリスクを踏まえ、最適な選択肢を複数提示します。

・気になる点(見た目/食事/将来のこと)があれば、その場で担当医と相談して、模型や写真、仮歯で確認しながら決めていきましょう。

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