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奥歯は金属のほうが強いですか?

2025年10月6日

前回のコラムでは、すべての歯にセラミックは使えますか、について詳しく解説しました。

前回の要点は、理論的には多くの歯にセラミック系の材料を使えるが、実際には部位や咬み合わせ、咬合力(歯ぎしり等)や歯の残存状態、そして審美ニーズや費用などを総合的に判断して決めることが多い、ということでした。

今回のコラムでは、奥歯は金属のほうが強いか、について詳しく解説していきます。

端的に言えば「場合によっては金属が有利」なこともありますが、必ずしも金属が常に最良というわけではない」ということになります。

素材ごとにはそれぞれの長所・短所があり、咬む力(咬合力)・歯並び・対合歯(咬み合う相手の歯)の状態・審美の優先度・金属アレルギーの有無などを総合して選ぶのが正しい判断です。

金属(メタル)の長所・短所

長所

耐久性・靭性が高い
金属は薄く作れても強度があり、長年にわたり摩耗や破折が少ない傾向があります。特に金合金(ゴールド系)は適合性や摩耗性に優れ、咬合ストレスの高い奥歯での使用実績が長いです。
・削る量が少なくて済む場合がある
金属は薄くても強いため、歯質の切削量を抑えられることがあります(歯を残す観点でメリットと言えます)。
・調整がしやすく再適合が容易
調整や再装着の際に扱いやすい素材です。

短所

・見た目が目立つ
保険適用のものは銀色のため、口を開けたときに見えやすく、前歯や見える部位には不向き。
・金属アレルギーのリスク
ニッケルやパラジウムを含む合金で、人によってはアレルギーが出ることがあります。
・歯や対合歯への影響
硬い金属は対合歯の磨耗を抑える面もありますが、素材や形によっては対合歯を摩耗させることもあります。

セラミック系(ジルコニア・オールセラミック)の長所・短所

長所

・審美性が高い
天然歯に近い色・透明感を再現できる(前歯だけでなく、最近は奥歯でも十分審美性を確保可能です)。
・金属を使わない(メタルフリー)
金属アレルギーの心配がない。
・表面がツルツルで着色・プラークが付きにくい傾向

短所

・衝撃や過度な咬合力で割れるリスク(素材による)
特に薄く作られたガラス系セラミックは割れやすい。ジルコニアは強度が高いものの、設計やポリッシュ(仕上げ)次第で対合歯の摩耗性が問題になることもあります。
・削る量が多くなる場合がある
十分な強度と審美性を確保するためにある程度の厚みが必要で、金属の場合と比べて歯を多めに削る設計になることがあります。
・費用が高くなることが多い
自費診療が一般的であり、被せものの素材によって費用は異なりますが、10万~20万円が一般的であり、保険治療のものと比べて高額になります。

「強さ(強度)」の比較ポイント

・咬合力が非常に強い(歯ぎしり・食いしばり)場合
金属(特にゴールド系)や高強度ジルコニアの方が向くことが多いです。
ジルコニアでも単体(モノリシック)タイプは強度が高く適用範囲が広がりましたが、咬合設計や仕上げ(研磨・グレーズ)を適切にしないと対合歯を摩耗させることがあります。
・咬合バランスがよく、審美性を重視する場合
オールセラミックや多層ジルコニアなど、見た目の良いセラミック系が適しています。
・対合歯が天然歯か人工物か
硬い素材(例:粗研磨ジルコニア)は天然の対合歯を擦り減らすおそれがあるため、適切な表面処理(滑らかに研磨・グレーズ)や素材選択が重要です。

実際の臨床での選び方(例)

・奥歯で咬む力が強く、耐久性最優先
金合金クラウンやモノリシックジルコニアが候補になります。ナイトガード併用を推奨する場合もあります。
・奥歯だが見た目も気になる(笑ったときに見える)
ジルコニア(内部構造を工夫したものや外面にセラミックを焼き付けたもの)を検討するといいです。
・金属アレルギーがある/金属を避けたい
ジルコニアやオールセラミックなどのメタルフリー素材を優先することがほとんどです。
・歯をあまり削りたくない/土台が弱い
金属冠の方が削る量を少なくできるケースがあるため、有利なこともあります。

メンテナンスと長持ちさせるコツ

・咬合チェック
かぶせた後の咬合調整は必須です。高く当たる点があると早期破損につながります。
・ナイトガード(マウスピース)
歯ぎしりのある方は特に必須に近いです、素材を問わず寿命を延ばします。
・定期検診で辺縁(マージン)や接合部を確認
隙間や劣化を早期に発見して対処することが重要です。
・対合歯のケア
ジルコニア等は対合歯の摩耗リスクを考え、研磨状態や咬み合わせを調整します。

ケーススタディ(短い事例)

・ケースA(強い咬合力・奥歯)
50代男性、重度の歯ぎしりがあり、左下第一大臼歯にジルコニア単体クラウンを装着、就寝用のナイトガードを作製しました。3年後も問題ありませんでした。
・ケースB(奥歯だが審美も希望)
30代女性、奥歯の銀歯を目立たなくしたいという希望でモノリシックジルコニアを選択しました。滑らかに仕上げて対合歯摩耗を最小化にして満足を得られています。
・ケースC(金属アレルギーの既往)
金属で皮膚炎が出た患者さんで、金属フリーのジルコニアクラウンで治療しました。アレルギー症状は消失。

まとめ(当院からのアドバイス)

・「金属のほうが強い」場面は確かにありますが、現在のセラミック(特にジルコニア)は非常に高強度で、奥歯にも十分使用できるケースが多いです。
最適な素材は“その方のお口の状態・咬合・希望”によって異なります。耐久性、審美性、金属アレルギーの有無、削る量、費用などを総合して判断します。
当院では、診査(口腔内写真・レントゲン・咬み合わせ評価)を行い、患者様のライフスタイルも踏まえたうえで最適な素材を提案します。咬合力が強い方にはナイトガードの併用を強くおすすめしています。

気になる点や「自分の奥歯にはどれが合うの?」といったご相談があれば、どうぞお気軽にお越しください。診断のうえ、メリット・デメリットをわかりやすくご説明します。

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