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神経を取らずにかぶせものはできますか?

2025年9月1日

前回のコラムでは、かぶせものをする前に歯をどれくらい削るのか、について詳しく解説しました。

前回の要点は、基本的に削る量は“最小限”が原則であるが、実際のところ削る量は素材の種類や部位、虫歯や古い詰め物の大きさ、ひび割れの有無、咬み合わせの強さ・癖、見た目の要求度(透明感や色合わせ)などで変わり、必要以上に削ると歯が弱くなる・しみるなどのリスクが増え、削りが足りないと、かぶせものの厚みが足りず割れやすい・外れやすい原因になるのでバランスが大切であるということでした。

今回のコラムでは、神経を取らずにかぶせものはできますか?について詳しく解説していきます。

神経を取らずにかぶせものはできるかと言えば、可能な場合が多いです。

ただし「できるかどうか」はその歯の状態(虫歯の深さ、症状、歯の破折の有無、根の状態など)によって変わります。私たち歯科医は、できるだけ歯の神経(歯髄)を温存する方向で治療を検討しますが、場合によっては根管治療(神経を取る処置)が必要になることもあります。以下に詳しくわかりやすく説明していきます。

1) 神経を残せる主な条件

虫歯が神経まで達していない、または神経にほとんど炎症がない場合
自発痛(何もしなくてもズキズキする痛み)がない、冷温刺激での異常な強い反応がない場合
・歯の破折が深刻でない、根の先に炎症が示されていない(レントゲンで問題がない)場合

こうした条件が満たされれば、神経を残してかぶせものを行うことが選択肢になります。

2) 神経を残すための主な治療法(概念)

・間接覆髄(間接覆髄法)
深い虫歯でも、感染部を極力除去して健全な象牙質を残し、ライニング材や封鎖材を置いて一時的に封鎖し、経過観察ののち確定修復を行う方法。歯髄を刺激せず保存する目的です。

・直接覆髄(直接覆髄)
虫歯除去中に小さな神経露出が起きたとき、露出部に生体に優しい薬剤を置いて封鎖し、神経を温存する方法。露出が小さく健康な神経組織が期待できる場合に有効です。

・部分断髄(部分的な除去)
神経の一部(表層)だけを短時間で除去し、残りの神経を保存する方法。若年者や露出が比較的新しい場合に成功率が高いとされています。

現在はMTA(Mineral Trioxide Aggregate)やBiodentineといった生体適合性の高い材料が広く使われ、従来のカルシウム水酸化物よりも高い成功率が期待できるため、神経保存の選択肢が増えています。

3) 神経を取る(根管治療)と残す(歯髄保存)の違い・メリット・デメリット

神経を残すメリット

・歯に感覚(温度や圧力の感知)が残る(咀嚼の保護反射)
・歯の“生きている状態”を維持できる(栄養供給がある)
・将来的に根管治療を避けられる可能性がある

神経を残すデメリット/リスク

・保存処置が失敗すると、後日根管治療が必要になることがある
・経過観察が必要で、再来院や追加処置が発生する場合がある

根管治療(神経を取る)メリット

・痛みや感染を確実に取り除きやすい
・かぶせものを装着した後の再発リスクを低くできる場合がある(特に既に深い感染があるとき)

根管治療のデメリット

・歯は「無髄」になり、感覚が失われる(歯が脆くなるとも言われる)
・根管治療自体に複数回の通院が必要になることが多い

4) 実際の治療の流れ(神経を残す場合の一例)

1.診査:視診、冷温・打診テスト、レントゲンで根の状態を確認
2.カウンセリング:保存可能か、失敗リスク、必要なフォローを説明し同意取得
3.虫歯の除去:可能な限り感染歯質のみを除去
4.保護材の設置:MTAやBiodentineで覆い、暫間充填(必要なら仮封)
5.経過観察:症状の有無、レントゲンでの変化を数週間〜数ヶ月単位で確認
6.最終修復:問題なければかぶせもの(クラウン等)を作製・装着

5) こんな場合は神経を取る(根管治療が必要)になりやすい

・強い自発痛や夜間痛がある(不可逆性歯髄炎の疑い)
・根尖部に既に膿や透過像がある(根の先の感染)
・歯が大きく割れていて神経が露出・損傷している場合・
・過去に保存的処置をしても症状が改善しない場合

6) 経過観察とフォローの重要性

神経を残す治療では定期的な経過観察(症状確認・レントゲン撮影)が必須です。
治療後に次のような症状が出た場合は早めの来院をお勧めします。

・再びズキズキする痛みが出た
・咬合時の強い痛み、腫れ、発熱や頬の腫れが出た

これらは神経の炎症や感染のサインであり、根管治療が必要になることがあります。

7) 患者さんへのアドバイス(どう選ぶか)

・痛みや症状がない・検査で良好で、歯質をできるだけ残したい方は「神経温存」を第一選択として相談しましょう。
確実性を重視する場合や、既に深い感染がある場合は、根管治療を行ってからかぶせものを作る選択も合理的です
費用・通院回数・将来のリスクについて、歯科医と十分に話し合って決めるのが大切です。

8) まとめ

当院では、歯の寿命を最優先に考え、可能な限り歯髄(神経)を残す治療を検討します。

ただし、保存が適さないと判断した場合は無理をせず根管治療を行い、長期的な安定を目指します。どちらの選択にもメリット・デメリットがありますので、検査結果と患者さんのご希望を踏まえた上で最適な治療方針を一緒に決めております。

気になる歯があれば、症状の有無にかかわらず早めにご相談いただけると、診査のうえ、具体的な治療プランと経過観察のスケジュールなどをわかりやすくご説明いたします。

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