虫歯は進行停止することがあるの???(その②)
2023年6月22日
前回のコラムでは、虫歯が始まっているとしてもある条件を満たしていると、虫歯進行は停止し現状が維持されることがあるということを解説しました。
そして、その「ある条件」というのを考える際に、「歯の脱灰を生じにくくする」と、「歯の再石灰化を促進させる」の2点に注目し、
- 1.虫歯を引き起こす細菌の好物である糖がない状態にする
- 2.口の中にいる虫歯を引き起こす細菌を除去する
- 3.脱灰により壊された歯の表面を再石灰化させやすくする
という3つを保ち続けると良いことを解説しました。
1.の「虫歯を引き起こす細菌の好物である糖がない状態にする」については前回コラムで既に解説したので、2.と3.について解説を続けていきます。
口の中にいる虫歯を引き起こす細菌を除去する
2.の「口の中にいる虫歯を引き起こす細菌を除去する」ためには、どうすれば良いか何となく見当がつく方もいると思いますが、当たり前のことですが歯を磨くことなのです。
歯を磨くと言っても「すみずみまできれいに磨く」という点を考慮しないといけません。
歯と歯の間や、歯ブラシの届きにくい所、歯並びの良くない所などは磨き残してしまう典型的な場所です。
歯ブラシだけでは掃除しきれないので、デンタルフロスや糸ようじ、歯間ブラシ、そしてエンドタフトブラシといった補助的な道具を用いると、磨き残した部分をさらに減らすことができます。
意外に知られていないのですが、一般的に歯ブラシ単独での掃除だと、全体の60%前後しか汚れが落とせていないと言われています。
補助的道具を併用することで更に20~30%程度の汚れが取れます。
口の中を念入りにうがいすることで、簡単に虫歯を引き起こす細菌が除去できないのか、と考える方もいると思いますが、細菌は歯の表面にベッタリ付着していることがほとんどなので、歯ブラシなどを用いて擦らないと除去はできません。
これは油で汚れた食器を、単に水ですすいだだけでは汚れが取り切れないのと似ています。
脱灰により壊された歯の表面を再石灰化させやすくする
最後に、3.の「脱灰により壊された歯の表面を再石灰化させやすくする」ためにはどうしたら良いかですが、前提として歯磨きがしっかりできていて、歯の表面の汚れ除去が完了しているのかどうかが再石灰化の効率を大きく左右します。
再石灰化させる歯の表面に、邪魔をしている汚れがあったのでは再石灰化作用は生じないか、十分に生じにくい状態となるのです。
脱灰された面の表面の汚れがない状態でその面が唾液に覆われると、唾液の中のカルシウムが取り込まれて再石灰化は進みます。
しかし、脱灰の面積的な範囲や、脱灰の深さ的な程度が大きいと、その程度により再石灰化には時間はかかります。
脱灰作用で歯の表面からカルシウムが失われて穴があいた所に、唾液中のカルシウムが再び穴にはまり込んで再石灰化が起こるというのがベースなのですが、このような場合には脱灰でカルシウムの失われた穴があちこちにある状態なので、唾液の中のカルシウムだけでは足りないという事態になります。
では、このように脱灰程度が大きい場合には、歯の表面の再石灰化のために歯の表面をできる限り長い時間、唾液に浸せばいいという事になるのでしょうか。
この考え方は理想なのかもしれませんが、果たして何時間も飲まず食わずの状態で空腹を我慢していられるでしょうか。
こんなことをしなくても、唾液に長時間歯を浸す以外に、再石灰化を促進させるための良い方法があるのです。
フッ素入りの歯磨き粉を用いて歯磨きをしたり、フッ素入りのうがい薬で含漱することで、再石灰化を補うのです。
脱灰で失われた歯の表面の穴には、カルシウムだけでなくフッ素が入りこんでも再石灰化同様に歯の硬さが安定するのです。