かぶせものの周りの歯茎が黒くなるのはなぜですか?
2025年11月10日
前回のコラムでは、かぶせものの金属が体に悪影響を与えることはあるのか、について詳しく解説しました。
前回の要点は、多くの場合歯科用金属が直接的に重大な全身障害を引き起こすことはごく稀であり、局所的なトラブル(アレルギー反応や口内の違和感)や不快な症状が出ることもある、という内容でした。
今回のコラムは、かぶせものの周りの歯茎が黒くなるのはなぜかについてです。
歯ぐきがかぶせものの周りで黒ずんで見えると不安になると思います。
結論から言うと、原因として考えられることは複数あり、それぞれ対処法が違ってきます。
早めに原因を見きわめることで、改善・対策できることが多いので、気になる場合は歯科で診察を受けることをお勧めします。
考えられる主な原因とその見分け方、対処法、予防法をくわしくまとめながら解説していきます
主な原因と特徴について
1.金属の縁(縁の部分を専門用語では「マージン」と言います)が見えて黒く見える
原因の概要
一部分でも古い金属を使用した被せものでは、歯に被せた金属部分の縁が歯ぐきの下から見えたり、歯ぐきが下がることで金属縁が露出して黒く見えることがあります。
見た目の特徴
歯ぐきの縁に沿って「線状」ないし「境界」が黒っぽく見え、特に笑ったときや口を大きく開けたときにその部分が目立ちます。
対処法
金属縁をセラミックなどのメタルフリー素材に置き換えたり、歯ぐきが下がっている場合は歯肉の移植(遊離歯肉移植や結合組織移植)で審美改善することができます。
2.金属イオンの歯ぐきへの沈着(メタルステイン)/金属の腐食による歯ぐきへの色素沈着
原因の概要
銀歯やパラジウム合金などから微量の金属イオンが溶け出し、歯ぐきや周囲組織に沈着して黒ずむことがあります。
見た目の特徴
境界だけでなく、歯ぐき表面が斑状に変色することがあり、色味としては灰色から黒色です。
対処法の例
原因となる金属をメタルフリー素材に交換することで改善することが多いです。
歯ぐきをレーザーで蒸散させる方法もありますが、問題を引き起こした原因の被せものを残したままだと根本的な解決にはつながりにくいことが多いです。
3.アマルガムなどの外傷性の埋没金属(局所色素沈着)
原因の概要
以前の治療や外傷で金属や修復材の微小片が歯肉や粘膜に埋入され、局所的に黒っぽくなることがあります(アマルガムタトゥー等)。
見た目の特徴
小さな点状・斑点状の黒色が特徴で、周囲は健康な歯ぐきで、痛みや炎症を伴わないことが多いです。
対処法
詰め物を交換するだけでは解決することは難しく、見た目が気になる場合は外科的に除去(切除)できることがあります。必要なら病理検査で確認する場合もあります。
4.歯ぐきのメラニン色素沈着(生理的/喫煙関連)
原因の概要
もともとの肌質(メラニンの多い人)や長年の喫煙などで歯ぐきが濃く見えることがあり、被せものがある場所だけでなく口腔全体の色が濃い場合、これは全身的要因のことが多いです。
見た目の特徴
歯ぐき全体にわたる均一、又は、斑状の茶〜黒色を呈し、かぶせもの周囲だけに限局しません。
対処法の例
審美的に気になる場合はレーザー除去や表層のメラニン除去(ガムピーリング)を行うことが可能ですが、再発することもあります。
5.セメントや着色物の付着(辺縁部の着色)
原因の概要
かぶせものの調整や接着時に使ったセメントが歯ぐきの縁に残っていたり、プラークと混ざって黒く見えることがあります。
見た目の特徴
比較的表層的で、歯科医師や歯科衛生士によるプロのクリーニングで落ちることが多いです。
対処法
歯科でのクリーニング(スケーリング、プロフェッショナルクリーニング)や辺縁の清掃で改善します。
6.う触(かぶせものの下で進行する虫歯)や感染による変色
原因の概要
被せものののマージンから細菌が入り、被せもの内部で虫歯や感染が進むと歯根や周囲組織が変色して黒っぽく見えることがあります。
見た目の特徴
黒ずみの周囲に腫れや排膿、小さなフィステル(歯ぐきが膨れた膿の出口)が見られる場合もあり、痛みや違和感を伴うこともあります。
対処法
再治療(かぶせものを外して虫歯除去・根管治療など)や場合によっては抜歯。早めの診断が重要になります。
7.インプラント周囲の金属露出やメタルアバットメントの影響
原因の概要
インプラントのアバットメント(金属部)が歯ぐきの近くで見えていたり、歯ぐきそのものが下がって根元が露出すると黒っぽく見えることがあります。
対処法の例
アバットメントを入れ直したり、歯肉再生手術で被覆するなどが該当します。
どうやって原因を見分けるの?(歯科での診断プロセス)
1.問診
いつから、どの部位か、痛みや出血の有無、既往(既に入っている被せものの種類や治療歴)、喫煙などを確認します。
2.視診・触診
黒ずみの形態(線状、斑点、広範囲か)や周囲の炎症の状態、個々の歯の歯肉ポケットの測定を行います。
3.レントゲン・必要ならCT撮影
内部の虫歯や根の状態、骨の吸収の有無を確認します。
4.簡易的な除去試験
表層の汚れやセメントであればクリーニングで取れるかを試すこともあります。
5.専門検査
必要に応じて皮膚科や病理検査(生検)と連携することもあります(ごく稀ですが、長引く・形の不整な色素沈着は悪性を否定するための検査が必要なこともあります)。
治療・対応の選択肢(原因別まとめ)
・セメントや汚れ
プロによるクリーニングで解決します。
・金属縁の露出/金属イオン沈着
審美改善を希望される場合は、メタルフリー(セラミック/ジルコニア)へのやり替えが有効。また歯ぐきが下がっている場合は歯肉移植等の外科的処置で改善することも検討になります。
・アマルガムタトゥー等の埋没金属
局所切除・外科的除去(必要なら病理検査)で改善可能が多いです。
・う触や感染による変色
被せものを除去して、歯の治療(虫歯除去や根管治療)を行い、必要なら適切な補綴を行います。
・生理的メラニン沈着や喫煙による色素沈着
レーザーや薬剤によるガムピーリングで改善しますが、再発の可能性があります。
・インプラント周囲の金属露出
アバットメント交換や入れ直し、歯肉の移植、被覆術などが適応になります。
実際の事例として
・ケースA(見た目の黒線)
20代の女性で、笑ったときに前歯の歯ぐきに黒い線が見えるのが気になり、過去に入れたメタルボンドの金属の縁が歯肉退縮で露出していたため、メタルフリーのオールセラミッククラウンへ置換し、審美的に改善しました。
・ケースB(点状の黒斑)
40代男性。喫煙歴が長く、左右の歯ぐきに小さな黒点がありました。
診察でアマルガムタトゥーと診断、局所切除で除去しました。
・ケースC(腫れと黒変)
50代女性。被せもの周囲の黒変と共に歯ぐきからの排膿があり、レントゲンで根尖病変を確認しました。被せのを外して根管治療を実施し、歯根の殺菌消毒の後に新しい補綴物を装着しました。
予防と日常の注意点(ご自身としてでできること)
・定期検診・プロクリーニングを受ける(3〜6ヶ月ごとが目安)。
・歯磨き・フロス・歯間ブラシで辺縁部のプラークを取り除く。
・喫煙は歯ぐき色素や歯周病のリスクを高めるため、できるだけ控える。
・古い詰め物やクラウンで気になる点があれば早めに相談する。
・新しい補綴を入れる際は「メタルフリーにできるか」を相談する(アレルギーや見た目の希望があれば特に重要)。
受診の目安(早めに来ていただきたいケース)として
次のような場合は早めに受診してください:
・黒ずみに 痛み・腫れ・膿(白い膿や排膿)が伴う場合
・色素が急に広がってきた、形が不整で拡大している場合
・出血が止まらない、または発熱を伴う全身症状がある場合
これらは感染や進行性の病変が関係している可能性があります。
最後に(当院からのメッセージ)
歯ぐきの黒ずみは「見た目」の問題だけでなく、内部の問題(虫歯・感染)や歯周組織の状態のサインであることもあります。原因によっては簡単なクリーニングで済む場合もあれば、かぶせもののやり替えや小さな外科処置が必要な場合もあります。
まずは診察・レントゲン(必要ならCT)で原因を特定し、患者さんの希望(審美性・費用・治療の侵襲)を伺いながら最も適した治療計画を一緒に決めます。
気になる方は遠慮なくご相談ください。


